the essence
2022/12/02
vol.8【冬イエロー】“交換日記”で思い出す、愛おしくて美しい色
|エディター小林文「BEIGE,の奥深きシンプル」
前回vol.7で “新しい友達” について書きながら思い出していたのは、 “古い友達” のこと。…というわけで、今回は本題に入る前にその話にしばしお付き合いください。
“古い友達” との出会いは小3。私が通っていた小学校に他県から転校生としてやってきました。前回のAちゃんも転校生、年齢も当時の私たちとほぼ同じ。そんなこともあって懐かしく、思い出の扉が開いたわけです。
話すようになったきっかけは、背の順で前後だったこと、家が近かったこと、そしてお互い漢字は異なるけれど名前が“あや”だったこと。お互い名字をモジッたあだ名で呼びあっていたので、ここではTちゃんとします。
本当は迎え入れる側のこちらから声をかけるべきだったのだろうけれど、Tちゃんのほうから「友達になろう」と言ってくれたのを覚えています。大人になってからそのことを話すと、「私、当時すでに転勤族の子どもだったから、人見知りとかしなかったのかも〜」とさらりと教えてくれました。
一緒に過ごしたのはたった2年間。5年生にあがるときにはまた別の学校に引っ越していってしまいました。でもその後も文通(!)していて、関係は継続。高校生で初めてケータイをもってからは、メールで近況報告をしていました。
就職を機に私が上京し、ふたりとも東京にいることがわかってからは、半年か年1ペースで会うように。
Tちゃん行きつけのビストロでワインをガブガブ飲んだり、お互いにカレがいないときは合コンへ行ったり、同じようなタイミングで失恋したときには一緒に高尾山を登ったり…(笑)。やがてTちゃんはお父さんと同じく転勤の多いカレと結婚し、数年東京を離れていたこともあったけれど、またすぐに関東に戻ってきて子どもの誕生を祝ったりもしました。
彼女の顔を思い出すとき、脳内の背景はいつも “きれいな黄色” がひろがっています。春生まれ、パステルカラーが似合う色白肌、裏表のないカラッとした性格…。 “きれいな黄色” は私がおもう、彼女のイメージカラー。それとプラス、小学3〜4年でやっていた “交換日記” 。
“交換日記” なんて今はひょっとしたら死語かもしれないけれど、私たちはまさに “交換日記” 世代。学校では話せなかった秘密の話、家族としたケンカの話、話題がないときはなぜかオリジナルクイズを出題(笑)。
そのくだらなさが愛おしくて、大人になってからふたりで飲みながら読み返しては、おなかを抱えて笑いました。そのときのノートが90年代大人気だったサルのキャラクターのもので。 “きれいな黄色” の表紙でした。
…「思い出話にお付き合いください」と前置きしたものの、さすがに長くなりましたね!
今回のBEIGE,のコート。展示会で初めて目にしたとき、なんだか懐かしいな〜と思いました。特にレトロな色、クラシカルな色、というわけでもないのになぜ…と考えていたのですが、私にとって“きれいな黄色”は懐かしい色としてインプットされているようです。
BEIGE,では「Maize」と名付けられていて、茹でる前のとうもろこしのような、白を含んだ優しいイエロー。ラムウールの入った繊細でなめらかなダブルフェイス仕立てのコートは、体が泳ぐコクーンシルエットに対し、小さめのテーラード襟というデザイン。スナップボタンで前をしめて着ると、丸みのあるフォルムとキリッとした襟の両方を楽しむことができます。
そして中に着ているニット。実は私もすでに愛用していて、良さを実感している逸品です。(グレーはすでに在庫切れですがベージュやネイビーはまだあるみたいですよ)
今季はあらゆるブランドでざっくりとした編み地のハーフジップニットを見かけますが、BEIGE,のこれは着心地が格別! ウール100%でとってもやわらか、ゴールドのジップが大人っぽい。カジュアルに転ばない工夫を凝らしていて、BEIGE,らしさを感じます。
ジップを上までしめればストールいらず、鎖骨あたりまで開ければ大きめの襟のようになる、もっともっと寒くなったらクルーのカットソーまたはタートルニットを入れてもいい。一枚でいろいろな表情を作れるニットです。
スカートはコートと同じ淡いイエロー。コートよりも少しハリのあるスムースなウール素材で、これまたカッコいい冬の装いにしてくれます。
コロナ禍でしばらく会えていないTちゃん、元気に暮らしているかな? 久しぶりに会うときはまた、いつもの小さなビストロで、ワイン片手に “交換日記” をめくりながら笑いあいたいな。…そんな日を思い浮かべるだけで、忙しない師走もなんだか楽しくなってきます。
コート/¥89,100(税込)
ニット/¥31,900(税込)
スカート/¥36,300(税込)
【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして主婦の友社『GISELe』、講談社『mi-mollet』などで編集・執筆中。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。