2019AWEssence
2019/11/01
【ダッフルコート】心地良い「裏切り」を求めてvol.12
私には5歳上の姉と2歳下の妹がいます。三姉妹の次女として生まれ育ったことが、私の生き方にもファッションにも大きく影響しているなぁとつくづく思います。
物心ついた頃から両親には「三人三様に育ってほしい」と言われていました。ひとりひとりの個性を伸ばしてあげたい、という親心を幼いながらに理解していました。が、理解しようとしすぎるあまり、私は姉や妹とは常に違う行動をとらなくちゃ! と思っていたんです(笑)。
たとえば、ファッションでいうと3人お揃いの時期をすぎ、それぞれ自分のお金で買うようになった頃。フィット&フレアのお嬢さんっぽいワンピースが好みの姉、ショートヘアにボーイッシュなパンツスタイルが似合う妹を見て、私は海外セレブのカジュアルを参考にダメージデニムをはいていたりもしました。
また、勉強ができた姉妹を見て(そこのレベルに達しなかったというのもありますが笑)、私は運動部に進んで筋トレに精を出し、体育会系キャラになろうとしました。就職活動でも、ふたりと被らないであろう営業という仕事を志望したくらい。「三人三様」という言葉のパワーによって突き動かされていたところもありますが、私自身、姉妹の中で少し雰囲気が違うと言われることが心地よかったのも事実。そういう自分を精一杯楽しんでいたと思います。
そんなわけで、正統派トラッドな印象が強いダッフルコートとも一定の距離感を保っていたんです。これは私の担当じゃない、私はもっとどこかにクセのあるものを着なくちゃ、と。でも、着た瞬間ぐっと心を掴まれてしまって! カジュアル、トラッド、クラシック…そういった従来のイメージに捕われていない、大人のための新しいダッフルコートだったから。
ハリやコシのあるややマットで地厚なウール、それとは対照的なツヤのあるサテンの裏地。ダッフルコートの要である留め具は本革ベルトで大人っぽい、それに対して袖や裾など端は断ち切りにしていてラフな軽やかさがある―――。ダッフルコートの域を大きく逸脱していないのに、こんなにも新しくできるんだ! と感動しました。
生き方もファッションも、ときに自分の気持ちとは裏腹な行動をとってまで立ち位置を気にしていた私も34歳。今ようやく誰のことも気にすることなく、自分の好きな仕事・ファッションに辿り着き、心から楽しむことができています。だからこそ、思うのです。
自分の好きな分野で精一杯やって、イイ意味で常に裏切りたい――――――
あれ。このダッフルコートに勇気づけられた結果、何だか長文になりました、すみません(笑)!身長154cmの私が4サイズを着るとこんな感じ。たっぷりロング丈なのが今っぽい。あえて黒スキニーとストレッチブーツでモノトーンに。チェックのバッグもグレーベースのものを選んで、トラッドとモードの融合をはかったスタイルに。フードをご覧ください。しっかり硬さの素材のおかげで、どんなに動いてもきれいな形はそのまま。へたれず、かといってボリューミィすぎないこの立ち上がり方、拍手です!首元のスナップボタンはゴールド。フード付きのコートって、ノーカラーやチェスターに比べて「覆われている感」が強くなりがちですが、このゴールドをちらっと見せるだけで品のいいヌケ感が出る。うーん、大人っぽい!
コート/¥89,000(税別)
【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして小学館『Oggi』、講談社『mi-mollet』などで活躍中。またアパレルブランドや百貨店との商品開発、トークイベント、コラム執筆も担当。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。