2022AWEssence
2022/11/11
vol.6【コート】毎朝のコーヒーを欠かさない女性へ勧めるなら
|エディター小林文「BEIGE,の奥深きシンプル」
一種の職業病かもしれませんが、「手土産リスト」のストックは常に更新しています。
取材相手への差し入れとして、お世話になった方へのお礼として、撮影スタッフへの軽食として。甘い系やしょっぱい系、サクッとつまめる系、腹持ちするガッツリ系、ほっこり老舗系からあっと驚く食材を使った新進気鋭系、季節限定系…。アポイントに応じてスムーズに買い物できるようエリアもさまざま。ひとり暮らしの方へ贈る際は量が多いものは避けるし、小さなお子さんがいるご家庭なら、なるべく添加物が入っていないものを選ぶようにしています。
ちなみにお渡しする際、「つまらないものですが…」とは決して言いません。 だって、「つまらないもの」を選んだ覚えはないから(笑)。「ちょっとしたものなんですけどね」くらいの前置きはしつつ、全力でその商品の良さ、お店や作っている人の雰囲気、贈りものとして選んだ理由など…結構ガッツリ語ります。
さすがに熱く語りすぎたかな? とあとあと反省することもあるけれど、「ハンパな気持ちじゃないんです」ということはちゃんと伝えたいし、「へぇ、私も今度買いに行こうかな」「誰かに渡してみようかな」なんて思ってくれたら、なんだかうれしい。いや、私が作った本人じゃないんですけどね(笑)。
もちろん、自信をもってお渡しするには、自分の目や舌でもしっかりその良さを確認してから。自分で食べたことがないのにお渡しすることはまずありません。
服に関しても同じ。このコラムで毎回熱量たっぷりに書く際、自分の体でしっかり試着してから、その風合いや発色、着こなし例をお伝えするようにしています。だから、原稿に向き合ううちいつの間にかPC前を離れ、クローゼットで「これに羽織ったら…」なんて妄想を膨らませてしまうこともしばしば。脱線に脱線を重ねてキーボードをたたいています。
今回のこちらは、ウールコートとトレンチコートの間のような風合いが特徴。ふんわりあたたかいけれどマット。デザイナーさん曰く、「ウールベースの中に綿を入れたイタリア老舗メーカーの生地」だそうです。
しかも、表はメンズのスーツを彷彿とさせる斜めに織りの入ったビターブラウン、裏は無地でやや赤みを帯びたブラウン、リバーシブルです。
色の組み合わせといい、クラシックなデザインといい、レンガや石畳の乾いた街並みをさっそうと歩く紳士のような渋さがある。いい意味で日本人離れしているというか、日本のトレンドに媚びていないというか…そのバランスがめちゃくちゃBEIGE,らしいのです。
表はグレーがかったブラウンなので、グレーのニットやパンツとも相性バツグン。茶系のローファーもよく合う。あとは、黒タートル×黒ミニスカート、足元は黒ロングブーツなんていうのも素敵。人生経験とともに重厚感を増した大人の体にも馴染むでしょう。
アンチエイジングに必死になるのではなく、大人としての深みを受け入れている大人へ。または、そんな大人になる日を夢見ているミドル世代へ。
このコートを纏う女性はきっと毎朝のコーヒーを欠かさないだろうから、先日ロケ撮影でお世話になったカフェのクッキーを買ってお渡ししたい。手のひらほどの大きなサイズとざくざく食感、実はヴィーガンという繊細な味わいがサイコーなクッキー。同じく店内で丁寧に焼いているキャロットケーキやマフィンもオススメしたいな…。
上質なコートを羽織る妄想、大切な人にモノを贈る妄想、私の「職業病」に終わりはなさそうです。
コート/¥143,000(税込)
ニット/¥34,100(税込)
パンツ/¥36,300(税込)
【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして主婦の友社『GISELe』、講談社『mi-mollet』などで編集・執筆中。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。