the essence
2022/10/01
vol.3【祝10周年②】10年先も一緒かもと思える数少ない服
|エディター小林文「BEIGE,の奥深きシンプル」
私は自他ともに認める買い物好きです。バンバン買い漁るタイプではありませんが、自分で吟味したり、比較検討したり、ひと晩寝かせてみたり(笑)。服だけでなくバッグやアクセサリーも自分で選んで手に入れたい。
今は時代的にあまり見かけませんが、私が10代や20代のころによくあった女性誌の“彼におねだり♡”的な企画もまったくピンと来なかった。遠い昔、当時の彼にクリスマスプレゼントでもらった華奢なネックレスは、いつも身につけていなくてはいけないような気がして窮屈で…。お別れしたあとそっと処分したら、とても気がラクになったのを覚えています。
「自分のものは自分で選んで自分のお金で買いたい」。そういう私の性分を知っている夫には、付き合い始めから結婚した今に至る約10年、ほぼプレゼントをもらったことがありません。そのかわり記念日には一緒においしいものを食べに行ったり、知らない土地を旅したり、お笑いライブへ出かけたり…“楽しい時間の共有”というプレゼントをしてくれています。彼の名誉のために、一応フォローしておきます(笑)。
自分で買うことにこだわる理由のひとつに、着る・着ない、残す・処分する、という行為も、誰に気を遣うでもなく自分で選べる、というのもあります。吟味し気に入って手に入れたものでも、気分や時代の変化で着る頻度も期間も変動する。だからクローゼットを眺めてみると、実は6年選手のバッグがいちばんの古株くらいです。
“一生モノ”という価値観はまだ半信半疑ではありますが、「10年先も一緒にいられるかも」と思えるトレンチコートに出合いました。
BEIGE,誕生10周年を記念したトレンチコート。「大の寅さんファンなの」という、チーフデザイナー宮下厚子さんのクローゼットにありそうな本格的でメンズライクなトレンチは、やはり素材がとびっきりリッチ。
ふっくらソフトな着心地のイタリア産コットンギャバジンを使っています。なので、しっかり厚手なのに見た目より着てみると体に馴染むし、動きにあわせてゆったりと流れるドレープが優雅。着るほどに自分の体に合ってくるだろうから、経年変化を楽しむことができます。
ラフに羽織ったり、ウエストをベルトでキュッと絞ったり。いいモノだから…とガチガチに着ようとしないのが、かっこよく着こなす秘訣。衿とライナーには、vol.2で紹介したシャツと同様のチャコールグレーのフランネル素材を使用。そんな粋なあしらいも素敵です。
トレンチコート同様、経年変化が楽しめそうなアウターとしてライダースも。
実はBEIGE,からライダースが登場するのはとっても久しぶり。こちらも甘くしたりカジュアルにしたりせず、しっかり本格派。しっとり肌に吸い付くようなラムレザーと、シルバーではなくゴールドのパーツで、華を感じるスペシャルな1着です。
「10年くらい着てみようか」くらいの気持ちで着ながら、気がついたらおばあさんになるまで着ていた…なんて将来を想像するのもいいですよね。
自分で選んだかっこいい服をかっこよく着続けられるように頑張って働くぞー! と奮い立たせてくれる服。励みになります!!
【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして小学館『Oggi』、講談社『mi-mollet』などで活躍中。またアパレルブランドや百貨店との商品開発、トークイベント、コラム執筆も担当。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。