the essence

2023/09/28

vol.5【コート】よく着るボトムで選ぶベーシックコート
|エディター小林文「BEIGE,の奥深きシンプル」

私の住む東京では、昨年あたりからパンツバージョンの制服を着た女子中学生をたびたび見かけます。意識の高い特別な私立中学ではなく、近所のごくごく普通の公立中学校の登下校の風景。ニュースで「制服の選択肢が増えた」という話題は見聞きして知っていましたが、実際に目にすると…なんだかとってもじんわりあったかいものが体に広がります。

もう少し詳しく書きますね(笑)。

目の前を歩いていたのは、ふたりの女子中学生。ひとりは白いシャツとグレーのプリーツスカート、もうひとりは同じ白いシャツに同じグレーの生地でスラックス。

この状況、アニメなんかだと、ガーリーな子・ボーイッシュな子、のようにわかりやすく区別をつけたりしがちですが、リアルのふたりはいい意味でふたりとも同じような後ろ姿。それぞれの髪型とか背丈とか、制服以外のそういう情報はあまり思い出せないくらい。そもそもふたりがどういう理由でスカートorパンツを選択しているのか、私は知りません。

パンツ解禁を待ちに待ってはいているかもしれないし、両方もっているけれど体調が悪くて今日はたまたまパンツかもしれない。体育の着替えがラクだからスカートかもしれない。ただ、ふたりがとても楽しそうに信号で立ち止まって爆笑している姿は、微笑ましく、通りすがりの30代後半女性を(笑)あったかい気持ちにしてくれました。

自分の中学生時代のことも、ついでに思い出していました。

公立中学に通っていて、学校指定のセーラー服を着て登校。特に派手なグループにいたわけではなく、ただただ雑誌とファッションが好きなティーン。5つ上に姉がいた影響は大きかった。中学生に人気のブランドには興味がなく、大人っぽいブランドのお下がりをもらったり。冬のコートも今思うとシックなピーコートを着ていました。黒で姉からのお下がりでした。

そのことをふっと思い出したのが、このBEIGE,のピーコート。普遍的でベーシックなデザインが当時着ていたものに似ています。(ここでの色はベージュですけれど、黒もあります。)


ウール100%の二重織。体を委ねられる厚みとハリ感、表面は毛羽立ちがなく、キリッとクリア。ピーコートはこうでなくっちゃ!という清潔感がバシッと伝わってきます。


基本はベーシック。ただ、エンブレム入りのメタルボタン、サイドから見るとわかる緩やかなコクーンシルエットで、着ると新しさも感じる。個人的にグッとくるポイントとしては、ポケットがやや上に設定されていること、ボタンを全部閉めてハイネックっぽくしても着られるし、開襟にしても着られること。

制服にインスピレーションを得て、プリーツスカートやタック入りワイドパンツを合わせてもいいし、黒のスティックパンツですっきり、なんていうのもいい。

ダブルボタン繋がりでいうとケープもあります。素材は上のピーコートとはまた違うもの。


ウールのなかでも柔らかくなめらかなタッチのスーパー140というウール。体と一緒にしなやかに動きます。袖がなく前身頃から腕を出すケープは、それだけでドレッシィ。非日常な雰囲気がありますが、肩が落ちていないセットインスリーブのため、不思議とテーラードジャケットを着ているような安心感も。これ自体がAラインのシルエットなので、ボトムは細身のパンツが似合うと思います。

ラストに紹介するのは、とってもとってもラグジュアリーなコート!デザイナー陣が「今季はどうしてもこれでコートをつくりたい!」と社内で熱くプレゼンした生地だそうです。


ペルー産のベビーアルパカとウールをあわせて織った生地。アルパカは本来とても繊細でシワにもなりやすいけれど、特別な加工を施すことで膨らみと厚み、いい意味で力強さももたせています。

このリッチな風合いを存分に楽しめるよう、丈はたっぷりロング丈、体を大きく包み込むチェスターガウンのデザイン。真冬のドレスに纏ったり、はたまたハイゲージのハイネックとデニムのようなカジュアルなスタイルに羽織ったり。間違いなく暖かく、間違いなく絵になる。ふわっと白い霧がかかったような優しいベージュも素敵です。


よく着るボトムはなんですか? スカートorパンツ、細身orワイド…自分の冬のクローゼットの傾向を思い出してみると、おのずと必要なコートも見えてきそうですよね!



チェスターコート/¥220,000
Pコート/¥121,000
ケープ/¥92,400



【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして主婦の友社『GISELe』、講談社『mi-mollet』などで編集・執筆中。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。