the essence

2023/08/30

vol.3【シルク】予定調和にはさせない、パリシックな色とツヤ
|エディター小林文「BEIGE,の奥深きシンプル」

vol.1の最後にもチラッと触れましたが、今季のBEIGE,のテーマは『パリシック』。BEIGE,のフィルターをとおした『パリシック』が随所に感じられるコレクションです。

私も二度ほどですが、パリを訪れたことがあります。一度目は大学4年生の冬。卒業旅行に、友人とふたりでヨーロッパ4か国を2週間ほどかけてまわりました(うちパリは2日程度)。二度目はコロナ禍に入る前年の秋。夫婦で弾丸3泊5日の旅でした。

パリの地を踏んだのは合計で1週間にも満たない短い期間ですが、だからこそ、飽きる余裕がなく、記憶も鮮明に残っています。

大学4年のとき、初渡仏で驚いたこと。それは「私の知ってるパリジェンヌがいない!」ということ。

「私の知っているパリジェンヌ」といえば、トレンチにギンガムチェックのフレアスカート、赤いバレエシューズ、かごバッグにバゲットをさしている…、そんな「かわいい」女の子。でも実際にはそんな女の子には出会いませんでした。

道ですれ違うのは、トレンチだとしても黒タートルと黒デニム、赤はバレエシューズではなくパンツで取り入れている。パリジェンヌは「かわいい女の子たち」ではなく「どこか色気のある女性たち」だったのです。

BEIGE,の『パリシック』にも同じエッセンスを感じます。
たとえば、シルクブラウス。日本ではきっと、シルク=リッチな素材というイメージがありますが、『パリシック』な目線ではさりげなく、気負わず、さらっと着るもの。BEIGE,のこのブラウスもそんな雰囲気のシルク100%です。


緊張してしまうようなぴっかぴか・つやっつやではなく、程よい光沢感。さらりと肌離れがいいのに、膨らみもあるのは生地を二重織りにしているからなのだそう。


詰まったクルーネックにはドルマンスリーブとたっぷり長さをとったカフス。袖口に溜まる感じも、ボトムにインしたときにふっと空気をはらむ感じも、シルク素材だからこそ。キャメルに合わせる赤パンツも嫌味がない、わざとらしくない。スーパー120という、ウールの中でも繊細でしっとりとしたウール。一見薄手ですが秋冬素材。キリリとした発色です。


もうひとつこの色合わせもオツなので、ぜひ紹介させてください。黒に限りなく近いグレーとセージグリーン。どちらもちょっと霧がかかったような色出しで素敵。シルクは上のキャメルと同じですが、こちらはバンドカラーで第一ボタンをあけると、自然に胸元がのぞく。パンツは赤パンツとは別シリーズで、程よく厚手、カラッとクリアな素材感です。

シックで渋くてほろ苦い、等身大で大人のパリシック。今週末は赤ワイン片手に『エミリー、パリへ行く』の上司シルヴィーを眺めながらウトウトしたい…そんな気分です。





スタンドカラーブラウス/¥46,200 (税込)
ワイドストレートパンツ/¥48,400 (税込)

プルオーバーブラウス/¥46,200 (税込)
クロップドパンツ/¥35,200 (税込)
ワイドパンツ/¥39,600 (税込)




【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして主婦の友社『GISELe』、講談社『mi-mollet』などで編集・執筆中。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。