the essence
2022/09/03
vol.1【ツイードジャケット】服と年齢と挑戦と
|エディター小林文「BEIGE,の奥深きシンプル」
2018AWからスタートしたこの連載。今日から始まる2022AWでなんと5年目、9シーズン目を迎えることができました。以前から読んでくださっている方にも、初めて知ってくださった方にも、改めてこの連載について紹介させてください。
そもそものきっかけは、2017年の年始セールで買った一枚のロングコート。
当時の私にとってBEIGE,は、携わる雑誌でたびたびスタイリストさんがリースしてくる素敵なブランド、というイメージ。上質な素材を使い、シンプルでほんのりモード、そして丁寧な縫製。「これぞ大人の服」という印象で、32歳だった私には自分がまだそこに追いついていない気がして、なかなか手を出せずにいました。
が、前述した2017年の年始セールにておそるおそるショップをのぞいた際、一枚の美しいトープ色のロングコートに魅せられ、えいや! っと手に入れることに。そのコートはいつものブルーデニムをうんと洗練させてくれたし、着るたびに背筋もシャンと伸ばしてくれた。もっと似合うようになるには髪型も変えてみようか、アイシャドウも更新してみようか…など、自分と向き合う時間も与えてくれました。
そんなふうに私なりにBEIGE,のコートを楽しんでいる様子を当時のプレスの方が知り、「小林さんの言葉でぜひBEIGE,を語ってほしい」と声をかけてくださって…。まさか1枚のコートが5年も続く連載のきっかけになるとは、思ってもいませんでした。
それから5年、毎回の連載を書くにあたり知れば知るほど、BEIGE,の魅力の沼にハマっています(笑)。
32歳に持っていた「これぞ大人の服」のイメージとは別に、よく知りよく袖をとおす37歳の今は、「日本には稀有な服」としても紹介できるな〜と思っています。
夏にあえてのハイネックカットソー、オーガンジーでバンドカラーシャツ、コートにも使う極上ウールのプリーツスカートetc.…。今の日本のファッション業界では、「着る人に寄り添う」を「着る人に媚びる」と言い換えられそうなくらい、どのブランドも安牌な服が多かったりしますが、BEIGE,にはいい意味でそれを感じないのです。
今回のツイードジャケットもそう(やっとvol.1のアイテム紹介に入りますよ〜)。
メゾンブランドをはじめ、世界的にツイード生地が注目されているため、ツイードジャケット自体が珍しいわけではありません。が、こんなにも新鮮な気持ちで羽織れるものはそう見つかりません。
よくある仰々しいフォーマル調なツイードジャケットでもなければ、かといって、妙にカジュアルダウンしたものでもない。
いろんな色の糸をミックスさせたツイードではなく、潔く単色。コシと膨らみがあるドビーツイード生地を使っているのが、いわゆるフォーマルムードを払拭しています。ノーカラーにダブルボタン、くびれを作らずボクシィなシルエットにしているため、ジャケットというよりクラシックなカーディガンのような面持ちです。
カーディガンのような…といっても、よくあるオーバーサイズ系ではなく、肩の位置や丈感はすっきり。ツイード素材に照れて(?)カジュアルに方向に振るトレンドもありますが、BEIGE,はあくまでド正面から向き合っています。
『Café Noir』という色名で表現されるこちらのダークブラウン。インナーにも同じブラウンのニットを入れ、ボトムは白のウールのミニスカートを合わせています。
ジャケットは、色違いで白もあり。
実はつい先日、新しく担当している雑誌の企画内で、外国人モデルが同生地のパンツとセットアップでカッコよく着こなしてくれました。その雑誌は、以前携わっていたものとは別。以前のキャリア誌にも、そうではない今の雑誌にもピタッとハマるのは、BEIGE,ならでは。「これぞ大人の服」でありつつ「媚びない姿勢」を保つブランドだからだな〜と、再確認しました。
今回ちらっと出てきたミニスカートをはじめ、トレンチ、キルティングコート、ジップアップニットetc.…個人的にも気になるアイテムが盛りだくさん。すでにお財布と相談中の2022AWです。
37歳、BEIGE,の服とともに新たな挑戦を続ける姿を、この連載をとおして、お伝えできたらいいな…と思っています! 隔週金曜更新、全9回、よろしくお願いいたします。
【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして主婦の友社『GISELe』、講談社『mi-mollet』などで編集・執筆中。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。