2020AWEssence

2020/08/13

【インタビュー】the philosophy of vol.0

エディターの小林 文と申します。2020AWもよろしくお願いします!

2018AWからコラムを担当させていただき、5シーズン目。今回はスタートするにあたり、BEIGE,のデザイナー・宮下厚子さんへのインタビューをお届けします!

小林:私は2017年の年始セールで初めてロングコートを購入して以来、BEIGE,ファンになったのですが、その後コラムの打ち合わせで初めて宮下さんにお会いした際、「ああ、この方がデザインしているからか!」と、とても納得したんです。「この感動をコラムを読んでくださっている皆さんにお伝えしたい!」とずっと思っていたので、ついに実現できて本当にうれしいです。

宮下さん:ありがとうございます。お恥ずかしいですが・・・よろしくお願いします。

小林:早速ですが、今季のBEIGE,もとっても素敵ですね。シンプルだけれど、毎回新鮮さもあって・・・驚きます。そもそもデザインはどのように考えていくんですか?宮下さん:今シーズン、私も特にお気に入りなんですよ(笑)。BEIGE,のデザイナーは、ニット・カットソー担当が2人、布帛担当が私を含めて4人、計6人のチームです。

まず、ひとりひとり、"気になるもの"を持ち寄って話すんです。色、素材、シルエット、ディテール、丈感・・・もうなんでも自由に。その話し合いを重ねつつ、生地の展示会へ行ったり、商談したり。

一方でMD(マーチャンダイザー)側とは、昨年の反省やそれを踏まえた今季の数字としての目標も共有します。それぞれの立場からの情報を集めて。支流がやがて大きな川になるイメージでしょうか。

小林:2020AWはどんなことから着想を?宮下さん:企画に取り掛かる昨秋ごろ街を歩いていて、私も若いころから大好きな少しメンズっぽいクラシックな柄が戻ってきているな〜と感じていたんです。チームのみんなが集めてきた写真からもクラシックなものが多くて。と同時に、パリの生地の展示会『プルミエール・ヴィジョン』で千鳥格子とリバー素材を見つけて、「ああ、これでぜひ作りたい!」と。それでテーマを"ビヨンド・ザ・クラシック"にしました。
それらの生地を軸にいろいろ考えると、「サテンのブラウスを合わせたら素敵」とか、「じゃモヘアのニットも良さそう」とか、「足元はロングブーツがいいよね」「じゃ半端丈のパンツも」・・・と繋がって、どんどんまっさらなボードにスワッチ(生地見本)とデザイン画を埋めていきます。小林:"生地"、からなんですね!

宮下さん:生地の力って本当にすごい。だから、生地を触って、あれこれ考えを膨らませる工程が本当に好きなんです。上質だと生地値が高いんですが、MDが「いいものだから仕方ありません!」ってOKを出してくれることにも感謝しています。

小林:実は私、このコロナ禍でクローゼットの断捨離を結構したんですが、BEIGE,の服がズラーッと残ったんです。それはやはり生地がいいからで。毎シーズン、「わあ、この生地、着てみたい!」「時間をかけて宮下さんのように似合うようになりたい」ってワクワクするものが多い。私にとって、BEIGE,の服は"道しるべ"のような存在です。少し高くても、10年後も20年後も着たいと思う服だから、年割りで考えると「今買った方がお得なのでは?」 とも思ったり(笑)宮下さん:わ〜うれしい! 2012年、BEIGE,がデビューするとき、ロンドン発の『the gentlewoman』という雑誌が創刊されて日本に入ってきたんです。
社会で活躍する芯のある女性たちを取材している雑誌で、コンセプトも見せ方ももうすべてが素晴らしく。BEIGE,の考え方ともリンクしていて、書店で見つけたとき、「これだ!」と。当時、一番最初の展示会では、すべてのマネキンにこの『the gentlewoman』を小脇に抱えさせたほど。今も毎号購読して大切にしている雑誌ですね。BEIGE,のアイコンになったヌードカラーのジャケットもここからヒントを得てスタートしました。服って"その人らしさ"がにじみ出るもの。かといって、"鎧"でもない。あくまで着る人本人が主役だから、服なんてなんでもいいのだけれど、着ることでもっと"その人らしさ"を引き出すツールではあるな〜と。だからこそ、長く心地よ〜く着られる服を提案したいですね。

【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして小学館『Oggi』、講談社『mi-mollet』などで活躍中。またアパレルブランドや百貨店との商品開発、トークイベント、コラム執筆も担当。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。