2021AWEssence

2021/10/08

【秋アウター】“なくてもいいもの”が必要なとき

“なくてもいいもの”について。

たとえば、朝の情報番組の料理コーナーで使われる、一歩踏み込んだ系調味料。紹興酒やナンプラー。紹興酒は日本酒で代用OK、ナンプラーに至っては「ないならないで、結構です」と説明されたりする。

スクラブ洗顔料。メイク落としと洗顔料さえあれば(オールインワンタイプもあるし)、日々の顔面衛生上は困らない。

お笑いライブ。不要不急の外出制限下では、わざわざ劇場へ行かなくても済むよう同時配信のシステムが整い、家でも気軽にゲラゲラ笑える。

踏み込んだ系調味料もスクラブ洗顔料も生のお笑いライブも、“なくてもいいもの”と分類されてしまうかもしれない。

でも…でもなんですよね。やっぱり紹興酒やナンプラーをわざわざ入れると異国の香りがふわっと鼻から抜けて料理が本格的になるし、スクラブ洗顔料を使うとくすんだ肌色がワントーン明るくなって化粧のりが格段にアップするし、近年のテクノロジーに感謝しつつも、やっぱり生で観るお笑いライブは、配信と同じ内容でも、感動がひと味、いや10味くらい違う。 

“なくてもいいもの”は、一度その良さを知ってしまうと“あってほしいもの”または“なくては困るもの”になる可能性を秘めているのです。

秋のアウターもそう。秋のアウターは言ってしまえば“なくてもいいもの”。ニットを重ね着して、寒いのをちょっと我慢すれば、やり過ごせる。そうして本格的な冬が来るのを待って、一気に厚手のコートにジャンプしたっていいわけです。

それでも秋のアウターを提案する理由―――。そんなの、「だって素敵だから!」としか言いようがありません(笑)。限りなく白に近いライトグレーのツイードジャケット。イタリアの老舗メーカーの生地は、ウールにシルクやアルパカの糸を織りまぜ、白・黒・グレーがやさしく共存する。ふっくらやわらかな生地を、フェイクレザーのパイピングで引き締めて。ツイードジャケットだからって、「華やかに」ではなく、シックにバサッと羽織れるのがBEIGE,らしい。フェイクレザーのブルゾンも。まったくフェイク感がない見た目と、軽くてしなやかなストレッチ入りという機能性。ハードな印象になりがちなライダースタイプとは違って、ボタン&ファスナーレスでノーカラー。ショート丈で、合わせるボトムに苦労しません。そして、なんといっても今季のトレンドでもあるキルト加工。のっぺりしたデザインのレザージャケットはともするとコンサバティブになるのに対し、表面にキルト加工があるとぐっとモダン。レザースカートとならセットアップ風に、デニムを合わせればカジュアルに、と汎用性も高いのです。

あとはダブルボタンのジャケット。イタリア産ヴィスコースやポリエステルを混合させた生地は、毛足感がないので秋アウターとしてニットを着込んでもすっきり。襟裏のフェイクレザーや平面的なくるみボタンのアクセントがきいて、シャープに羽織ることができます。

“なくてもいいもの”を楽しめることこそ、秋の醍醐味。“あってほしいもの”や“なくては困るもの”になるかどうか…それはぜひ、カラダで試してみてください。

フェイクレザーブルゾン/¥49,500(税込)
ツイードジャケット/¥79,200(税込)
ダブルジャケット/¥53,900(税込)

カットソー/¥19,800(税込)
パンツ/¥24,200(税込)
スカート/¥23,200(税込)

【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして小学館『Oggi』、講談社『mi-mollet』などで活躍中。またアパレルブランドや百貨店との商品開発、トークイベント、コラム執筆も担当。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。