2021SSEssence

2021/05/14

【夏羽織り】10年ぶりに向き合うサマージャケット

昔の自分のことを知っている人に、当時の様子を聞くのは恥ずかしいものです。それが身近な存在だとなおさら。会社員時代の同僚として知り合った夫は、私の不器用すぎるエピソードをたくさん覚えているため、本当に厄介(笑)。私本人は、繊細なくせにどこか楽観的なところもあるため、都合の悪い記憶はゴソッと消去しているっていうのに。

この間もウォークインクローゼットの整理をしていたら、棚の奥にしまってあった(覚えすらない)会社員時代の小さなアルバムが出てきて(なんで現像していたんだろう…)。

整理の手をとめてパラパラとめくってみると、自分でもびっくりするくらい顔が今と違う!

もちろん眉やアイメイクの具合もあるのですが、写真の中の26歳の私はなんというか…殺気立っている(笑)。目尻なんて、今より5ミリくらいつり上がっている気がします。驚いて夫を呼びつけると、大笑い。悔しくて夫が写っている写真も探したら、当時24歳の彼もまた怖いっ! ふたりで大笑いしました。

まあ、私や夫に限らず、“20代あるある”ですよね? テレビでも、有名人の経歴コーナーで登場する写真は、どれも鋭い顔つき。荒波に揉まれもがきながら前に進もうとしている様が顔に滲み出ていて、ジーンと胸が熱くなります。

ちょっと脱線しましたが、クローゼットの奥のアルバムで見つけた26歳の私はどれも、ジャケットを着ていたのも新鮮でした。

法人向けの営業職だったため、四季を問わずジャケットは絶対。写真の中で着ていたのはヒップにかかるくらいのややロング丈で、肩には薄手のパッドが入った黒のテーラードジャケットでした。

自分より強い相手に向かうときの“戦闘服”だったから、袖のあたりなんてクタクタで、ずいぶんと疲れています。そうそう、仕事の合間にのぞいた某外資系ファストファッションブランドの銀座店で買ったんだ…と記憶が一気に蘇って。そのジャケットに、ノースリーブブラウスと黒の細身クロップドパンツが私の定番スタイルでした。

仕事内容も仕事を通じて出会う人もがらりと変わった今、私にとってジャケットはマストアイテムではなくなっています。

けれど、今ならもっと上手く着こなせるかも! という気持ちにさせてくれたのがBEIGE,の今季のジャケット。リネンのようなドライな風合いがありつつ、実はコットン100%。ハリ感を出す特殊な加工を施しているそうで、薄手なのにぺらぺらとした感じはなし。肩はしっかりジャストな位置に設定。パッドが入っていないのにフォルムが崩れず芯があり、本格的なダブルボタンのデザインも含め、キリッとハンサム。ほんのり透け感もあるので、夏の羽織りとしてもぴったりです。

この夏で36歳。

10年前より酸いも甘いもそれなりに噛み分けて、情けなさや恥ずかしさも受け入れて。ようやくジャケットを穏やかな顔をして着られそうです。

ジャケット¥49,500(税込)
パンツ/¥39,600(税込)

 

【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして小学館『Oggi』、講談社『mi-mollet』などで活躍中。またアパレルブランドや百貨店との商品開発、トークイベント、コラム執筆も担当。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。