2021SSEssence
2021/04/16
【サマードレス】2020年とは少し変化した私のファッション観
国境はもちろん、県境をまたぐことも容易ではないご時世。一年前は「今年だけの辛抱!」と自分に言い聞かせていました。昨年のちょうど今ごろは一番センシティブになっていて、読む文章も書く文章もちょっと“感傷的”だったような気がします。
このBEIGE,のコラムに関して言うと、2020年AWシーズンに入るとご時世に触れることは減少。マスクも家ごはんもすっかり日常になって、取り立てて語ることでもなくなっていたし、意図的に触れずに“普通”に生きようとしていたのでしょう。
そして、不自由な一年を過ごし冷静になった今、“個人的変化”について考えてみました。
テレビに不安を煽られることを恐れ、情報収集も仕事のお供もラジオに切り替えるようになったこと(そのおかげで毎日心穏やか)、料理本を読む時間が気分転換になったこと(今までは食べログを見ているほうが断然好きだった)、ZOOMの利用を通して相手の話の長さが気になりだし、“我が振り直せ”で端的に話すよう心がけるようになったこと(笑)、そして、今まで以上にファッションが生きるモチベーションになったこと---。
2020年のファッション業界の主流は、“ラクな服”“リラックス感のある服”でしたよね。ゆるっとしたカットソー、ウエストゴムのパンツ、締めつけ感の少ない下着・・・
私も漏れなく飛びつきましたし、助けられました。
・・・けれど、一周まわって、やはり「少しだけシャンとする服が好き!」な自分に気が付いたのです。もちろんそれは、毎日8cmヒールを履きたくなったとか、ボディコンシャスな服を欲しているという話ではなく。気負わず、でも“ラクしすぎない服”が私のモチベーションを上げてくれる、という意味です。
BEIGE,のワンピースは、着てみるとまさにそれでした。体のラインを拾わないゆったりとしたシルエットで、一見“ラクな服”に位置づけられるかと思いきや、肌がほんのり透けたり、袖口や襟にフェイクレザーが施されていたりと、ちょっとした緊張感が添えられている。
素材だってそう。薄手でナチュラルな風合いながら、シャリ感やハリがある。オーガンジーよりコシがあって、リネンより繊細。淡い色×しなやかな素材でも、輪郭を際立たせることで全体を引き締めてくれる。これ見よがしではないけれど、よく観察すると随所にこだわりが光る服は、着る人自身の気分を上げてくれるな〜と改めて感動します。
着こなしはあくまでさらりとシンプルに。共布ベルトは結ばず垂らし、洗いざらしにオイルを揉み込んだツヤのあるヘアとともに。
きっといつか、この不自由な数年の経験が、私を含め様々な人のファッション遍歴に影響を与えるんだろうな・・・そんなことを思うと、ちょっとワクワクもしてきます。ワンピース/各¥47,300(税込)
シャツ/各¥29,700(税込)
【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして小学館『Oggi』、講談社『mi-mollet』などで活躍中。またアパレルブランドや百貨店との商品開発、トークイベント、コラム執筆も担当。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。